CD-Proプレーヤ製作記 その1〜その3

●その1

Philips社より送られてきた大量の資料と回路図を読み、正月休みに構想を練り直し、設計を完了いたしました。
その結果、折角CD-PRO moduleが高性能なビットストリーム DACも搭載している事から当初計画のCDトランスポートとしてのみでなく、CDプレーヤとしても使える設計となりました。以下CD-PROプレーヤと呼ぶ事にします。

CD-PROプレーヤは以下の部分からなります。

  1. Philips CD-PRO module
  2. 操作キー部
  3. トラック数、演奏時間表示部
  4. 上記2.3.を動かしPhilips CD-PRO moduleを制御する マイクロコントローラ部
  5. デジタルインターファイス部(同軸、TOS光出力)
  6. アナログ部(ローパスフィルタ、送り出しバファ)
  7. ミューティング機構
  8. 電源部(投入切断順序制御、安定化電源回路)

これらを4つの部分に分けて実装する事にします。

  1. Philips CD-PRO module  Philipsより購入したプロ用CDメカニズムとCD7再生システムが組み合わされた、産業用及びHiENDオーディオ用モジュール。
  2. 制御基板  上記  2.操作キー部  3.トラック数、演奏時間表示部 4.上記2.3.を動かしPhilips CD-PRO moduleを制御するマイクロコントローラ部 を載せる基板で基本設計と主要部品はPhilipsより供給され、キーSWや個別部品等を日本で購入可能な物に変更し再設計しました。
  3. 主基板  上記  5.デジタルインターファイス部(同軸、TOS光出力)   6.アナログ部(ローパスフィルタ、送り出しバファ)   7.ミューティング機構   8.電源部(投入切断順序制御、安定化電源回路)を載せる基板で新規に設計を行いました。
  4. 電源トランス 予想外に多種の電源電圧が必要になった為、トランスを特注する事になりそうです。

次回から1.〜8.の各部を複数回に分けて解説していきたいと思います。既に部分的な予備実験を行い、回路図は書き上がっていますが、全体の製作はこれからです。回が進むにつれ変更、修正もありえます。

CD-PROプレーヤの全体スペック以下となります。


●その2

Philips CD-PRO moduleの機能と特徴について書きます。

Philips CD-PRO moduleは大きくは以下の3つの部分から構成されています。

  1. VAM1252 CDメカニズム 24時間稼動を前提に設計された高耐久、高信頼なメカニズムです。強固なダイキャスト製マウントに高精度、高速なギヤー駆動式の読み取りヘッドが装備されています。 ギヤー駆動式の読み取りヘッドはヘッド部に駆動動力源を搭載する必要がなくヘッド重量が極めて軽い為、高い位置決め精度と高速な応答が可能です、さらにギヤーによる減速機構を持つ為、ヘッドの位置決め精度をモーター自体の位置決め精度の減速費倍の高精度にする事ができます。 これに対してスイングアーム方式やリニアトラッキング駆動式の読み取りヘッドはヘッド部に駆動モーターの一部を搭載しなければならず重量が増え応答速度が遅く、減速機構を持たない為、モーターの位置決め精度が即ヘッドの位置決め精度となります。
  2. SAA7372GP CDデコーダ、コントロールIC  CDから読み取った信号のデコードとサーボを行うICです。 サーボはデジタル方式です。 読み取られた信号はPhilips製のデジタルオーディオIC等、多くのIC共通の信号方式であるI2S信号と、デジタルオーディオ機器 間を繋ぐSPDIFデジタルオーディオ信号として出力されます。 今回のCD-PROプレーヤではI2S信号はTAD1305T DAC ICに送られアナログ信号に変換されます。 SPDIFデジタルオーディオ信号は同軸とTOS光コネクタより出力されます。
  3. TDA1305T DAC IC PhilipsのBCC方式デジタルアナログコンバータICです。 BCC方式は低ビット(5ビット)のDACとビットストリーム変調を組み合わせた新世代の方式です。 丁度BB社のPCM-1716やPCM-1732のマルチビットΔΣ変調方式が低ビットのDACちΔΣ変調を組み合わせているのと同様です。 Philipsのビットストリーム方式DACではDAC7の愛称で呼ばれた、TDA1547が有名です、TDA1547は純粋な1ビットのビットストリームDACでしたが、いまやビットストリーム方式とマルチビット方式の両方の利点を合わせ持ったBCC方式が主流となりました。 これはBB社のDACにおいても純粋なマルチビット方式のPCM1704 からマルチビットΔΣ変調方式のPCM-1716やPCM-1732へ主流が移ったのと同様です。 Philips CD-PRO moduleは現在のPhilips社のCD再生技術の集大成と思えます。

●その3

CD-PROプレーヤの制御基板について書きます。

制御基板は操作キーやリモコン等からユーザーの指令を受け、指令を実現するDASコマンドをCD-PRO moduleに送りCD-PRO moduleを動作させると共に、CD-PRO module から演奏状態(現在のトラック数や演奏時間)を受け取り蛍光表示管に表示する働きをします。制御基板はPhilipsより提供される主要部品と回路を元に一部の変更と日本で入手容易な汎用部品への置換を行っています。制御基板は操作キー、トラック演奏時間表示部、赤外リモコン受光部、制御マイコン、制御プログラム格納ROMで公正されています。

詳細は以下の通りです。

  1. 操作キー Philipsの回路では多数のキーがあり、CDプレーヤの 全ての機能を操作できる構成となっていますが、最近の CDプレーヤの形態に準じて本体の操作キーは絞りこみ、多くの機能はリモコンより実行する事にしました。 本体に残したキーは PLAY, PAUSE, STOP, PREV, REV, FF, NEXTの7キーです。 ここで第一番目の問題が生じました。 Philips回路では各操作キー2回路型のスイッチが用いられていますが、残念ながら国内では相当品を見つけられませんでした。回路の動作原理から普通の単一回路型のスイッチでも大丈夫そうなので変更しています。
  2. トラック演奏時間表示部 双葉製の蛍光表示管です。蛍光表示管(真空管の一種です、しかも何と直熱管なんですね!!)ので20Vの駆動電圧と2.5Vのヒーター電源が必要です。  操作キーと蛍光表示管はTMP47C212ANと言うキースキャナ、ディスプレイドライバICで駆動されます。 実はこのTMP47C212ANは蛍光表示管を直接駆動できる高耐圧IOポートを備えた4ビットマイコンでPhilipsによりROMにキースキャナ、ディスプレイドライバとして動作するプログラムが書き込まれて供給されます。さて第二の問題となったのは操作キーと蛍光表示管を1枚の基板に納める実装でした蛍光表示管が厚みがある為、一般の操作用スイッチ(タクトスイッチと言い押すとカチカチっと言う感触で動作するスイッチ)では背が低く蛍光表示管より埋もれてしまい、シャーシに実装した時、ブザマです。色々探してパソコン等のキーボード用スイッチを用いる事にしました。これですと背丈は高いのでキートップが蛍光表示管より高くなり基板をシャーシに納めた状態でキートップがシャーシより若干飛ぶ出す配置が可能です。
  3. 制御マイコン、制御プログラム格納ROM CD-Proプレーヤ全体を制御するのはP80C32-12と言う8ビットマイコンです。操作キーが押されたかと、赤外リモコン受光素子が何か受信したかを監視し、指令を受けたならば、指令を実効するDASコマンド列をCD-PRO moduleに送ります。 CD-PRO moduleがCDの演奏を開始するとCD-PRO moduleから、演奏中のトラック番号と演奏経過時間が随時送られてきますので、これをトラック演奏時間表示部に表示します。これらの動作に必要なプログラムは27C256B EPROMに書き込まれています。このプログラムもPhilipsより27C256B EPROMに書き込み済みで提供されます。

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