2011/October/13 (c) S.Yoshimoto
300Bは音が良く、優秀な特性を持つ真空管の王様です。
そして300Bアンプは真空管アンプの頂点と言えます。
ご自身のアイデアと技量でこの頂点を極めたいと望む方も多いのではないでしょうか。
本製作では最新の技術や素子を取り入れた斬新な構成の300Bシングルアンプを製作します。
理想的な300Bシングルアンプは”音が良い”アンプですが、
”音の良さ”を支える要件としては
があげられます。
300Bシングルアンプにて、これら要件をどのように実現すべきでしょうか?
300Bはシングル動作で8W出力が普通ですが、これは300Bのグリッド・マイナス領域を用いた場合の値です。
グリッド・プラス領域までを用いれば、さらに大きな出力が得られます。
グリッド・プラス領域ではグリッド電流が流れる為、CR結合による駆動が行えず以前より
が用いられていました。本製作では直結駆動により8W以上の出力を目指します。
300Bは低歪な真空管ですが、通常より高い負荷抵抗値と高電圧・低電流の動作点を採用し、さらなる低歪率を目指します。
300Bはバイアス電圧の値が大きく、良く用いられる自己バイアス方式では70V近くの電圧とその電力損失が300Bのカソード抵抗で消費されてしまいます。
本製作では固定バイアス方式を採用し300B のカソード抵抗を排してカソードでの電圧と電力の消費を削減します。
300Bは感度が低く、大きな駆動電圧が必要です。この為300Bを駆動する前段には大きな増幅度と出力電圧が求められます。
20倍程度の仕上がり利得と特性確保の為の10dB程度の負帰還量を得るには駆動段1段、300B出力段1段の2段増幅では裸利得が不十分です。
本製作では駆動段2段、300B出力段1段の3段増幅を採用します。
3段直結かつ固定バイアス形式では素子の温度よる特性変化や電源電圧の変動により出力管のプレート電流が安定しません。
本製作ではプレート電流の自動調整回路を導入します。プレート電流の自動調整化により温度や電源変動に対してプレート電流が安定化するのみでなく、300Bの消耗等に対する長期安定性も向上し、さらに固定バイアスにも関わらず300Bを無調整で交換できます。
多段直結回路では真空管の温まり時間差により、電源投入時に過電流となる危険があります。本製作では電源投入時の安全対策も導入します。
最大の雑音源は300Bのフィラメント点火電源です。交流点火では雑音を抑えられません。
従来からも直流点火が用いられていますが、整流が不十分であったり、安定化電源からの大きな発熱を伴ったりしました。
本製作では最新のDC/DCコンバータを用いて高効率・低発熱で低雑音な直流点火を行います。
さらに、初段管も直流点火とし、高圧電源にはMOSFETによるリップルフィルタを用い、さらなる低雑音を目指します。
本機の製作方針は
となりました。
以下、その設計と製作を行います。